古典を読むにはこのくらいのライトさが有難いです。かなり意訳された本文もさることながら、ドレの素晴らしい版画の数々が視覚的に理解を助けてくれます。
本作は700年ちかく前にダンテによって書かれたものですが、それ以前は地獄や天国という概念のみが存在するだけで、ダンテが本作で表現したような具体的なイメージは存在しなかったのだとか。その解釈の余地の広大さが近代以前の人々を魅了した宗教たる所以であるのかなぁとぼんやり思いました。そしてそれから500年後、ドレがダンテの作品を版画によって視覚化するのです。
漫画「鬼灯の冷徹」は私のとても好きな作品ですが、そちらに描かれている日本の地獄とダンテの描いたキリスト教の地獄はかなり趣が違うようです。煉獄はおそらく日本にはないし、キリスト教の地獄はかなり大雑把にまとめられているような気がします(笑) 日本の地獄は272もあり、罪の種類もかなり細かくカテゴライズされていて、もはや今はそんな罪ないんじゃ、、、みたいな現代に対応しきれないような地獄もあります。かなりシステマチック。
キリスト教の地獄は、(本書は意訳版なので省略されているのかもしれませんが)罪の分類が少なく、責め苦も日本の地獄に比べたらちょろそう、、(笑) ただこれもダンテが初めて具象化したってことなら納得です。
私が本作で一番好きだったのは、この部分。
「蜂はどんなに遠くへ行き、花の中にもぐりこみ向きを違えて出てきても、誰にも教えられることなく、おそらく考えることすらせずに、一直線に巣へと向かう。渡り鳥が故郷を目指す、流れを超えて川を上る魚は決して誤ることがない。おそらく人間にとって愛とは、そうした初原の力なのだ。」
そうであれば、良いなぁ。
- 感想投稿日 : 2019年12月31日
- 読了日 : 2019年12月31日
- 本棚登録日 : 2019年11月8日
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