遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1994年6月29日発売)
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1209年創立。日本で言えば鎌倉時代。
そんな由緒正しきケンブリッジ大学に、文部省の長期在外研究員として我らが(⁉︎)藤原氏が乗り込んだ。

氏の著書はどれも(笑えるという意味でも)面白く、共感ポイントもすこぶる多い。しかしケンブリッジ滞在時の記録をしたためた本書だけがなかなか手に入らず、今回ようやく悲願達成に至った!

藤原氏が客員教授として初めに招致されたのがアメリカのコロラド州。その頃のエピソードの記憶が濃厚だったから、毛色の違う英国ライフは自分にとっても新鮮だった。
労働者階級やニュースで流れるイギリス英語に苦戦しつつも、大学で他の教授と互角に渡り合う氏に惚れ惚れ。英語力もしかり、あとは度胸に3年のアメリカ生活で培ったユーモアと、見習いたい点が山ほどあった。(イジメにあった次男くんに「何でやり返さない」と「藤原家伝来の戦法」を叩き込んだ点には感心出来なかったが…)

「数学者」と副題にあるので(頭を抱えたくなるような)数式や定理を連想するかもしれないが、他著同様心配ご無用。登場はするが軽く流せる程度だ。
それに教授方も人の子。各々の人生・家族・人間らしい悩みetc.が寄り集まり、さながら一つの文学作品だった。(本書自体もどちらかと言えば文学的要素が強い!) 彼らの教養の高さもグッと作品を味わい深いものにしており、それだけでも読む価値がある。

イギリス人をどこか特異な集団だと感知しながら上手く説明できずにいたが、謎を解く鍵の一つが彼らの、これまた特異なユーモアにあったと言うのが一番腑に落ちた。
George Wellsの『タイム・マシン』よろしく、今昔の作品を行き来してユーモアから探っていくのもアリだな。。今年と言わず、今からでも!



■フレーズメモ↓↓(氏の著書を読んだ際は何かしらメモってしまう…)
「戦争の真実を頭で知ること、そして心で感じることが、若者にとっていま最も重要なことと思います。人間が理性だけで、戦争を廃絶することは不可能なのですから」
…氏の英国ライフを助けてくれたブライアンのお父さんの証言。第二次大戦で独軍と闘った経験を語る中で出てきたものだが、心が大きく揺らいだ。

「人品というのは、洋の東西を問わず、一目瞭然である」
…ここでもまた共感ポイントを発見!思わずメモる。紳士淑女の集まりに出席した際さすがの氏も気後れしたみたいだが、「日本人だから何だ」とジョインしに行ったと聞いて思わず拍手を送った。(買い被り過ぎ?笑)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年3月20日
読了日 : 2022年3月20日
本棚登録日 : 2022年3月20日

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