ショートショート美術館 名作絵画の光と闇

  • 文藝春秋 (2018年11月7日発売)
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古今東西の絵画を題材に2名の作家がショート・ショートを「競作」する。つまり一枚の絵に付き、2名それぞれが物語を作る。

これを作家ならではの特権に留めず、ペアを作ってチャレンジしてみるのもありかも笑 田丸氏・太田氏どちらの話がタイプか各章探っていくのも良いけど、それらを参考に「自分ならどんな物語にするか…」と思索にふけるのもまた違った楽しみ方になる。
各話の感想を書きたいが、ショート・ショート故に踏み込むと即ネタバレになっちゃうから、いつも通り掻い摘んでいく。

フランティシェク・クプカ「静寂の道」:元から不思議な構図やから、話を考えるのも楽しそう。『収穫される者』ではコズミックホラーっていう世界観に惹かれた。後半は少しぶっ飛んでいたけど、その辺の描写を丁寧にして尺を伸ばせばもっと面白くなり得る…はず!

ムンク「吸血鬼」: 自分みたいに血液が苦手な人は2作とも注意した方が良い、何ならこの章だけスキップしても良いかも。『吸わせ屋』に関しては鳥肌と悪寒が止まらなかったが、視点はユニークだったと思う。人って何かに魅入っちゃう(/魅入られちゃう)と、こんなにもどっぷりハマって沼化していくのかー。(素知らぬ顔)

月岡芳年「猫鼠合戦」:絵画自体は「鳥獣戯画」を想起させる。そのせいか2作ともコミカルな仕上がりだった。太田氏の『戦の始末』は、昔話みたいでオチもしっかりしている。せっかくだから田丸氏の『猫の悩み』と一緒に歌舞伎化してくれないかな笑 『猫の悩み』は落語テイストが入っており、トリに持ってきたら絶対ウケる笑

ルネ・マグリット「光の帝国Ⅱ」:太田氏の話はシリアスな面持ちのものが多い印象だったけど、『夜の町』は不思議な程に馴染んだ。あんな風に捉えたら、死も恐いものでなくなるのかも。不覚にもホロリと来た。
元ネタの絵が「光の帝国」なのに、両氏は夜と暗黒で絵の街を書き表している。それらのどこに光を見出すのかを、"鑑賞"する上でのTIPSとしておきたい。

上記の他にも絵画6作品が登場する。(↑も含め、全体的にSF・ファンタジー要素が強かった)

あとこれは巻末で判明したことだが…
実際ショート・ショートコンテストなるものが開催されていたようで、受賞作品も本書に掲載されていた。
一枚の絵からも十人十色の解釈が生じると、より確実に立証されている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年5月1日
読了日 : 2022年5月1日
本棚登録日 : 2022年5月1日

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