自閉症連続体の時代

著者 :
  • みすず書房 (2014年8月26日発売)
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感想 : 6
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「病や障害と認定されるのはどういうことか」、この本は自閉症スペクトラムとして生きていく中で、社会で経験するであろうすべてのことが専門的な言葉を使わずに書かれている。回りくどいのは当たり前である。何が問題なのか、どのように問題なのか、誰もはっきりとしたことが言えず、浮かび上がってこなかった、しかし当事者と周囲の人間にとって悩ましいことのすべてを記そうとしているからだ。著者は生存学の研究者である。病や障害と共に人はどのように生きるのか、生きていくのがよいのか、とまでいかなくても、一番マシなのか、を研究しているのである。だから、そのような人が生きていく上に身につけておくと良い考えた方も示してくれている。良心的だと思った。もっと本質的なことについては、著者の「私的所有論」をはじめとする文献を読むとよいだろう。発達障害の立ち位置は身体障害や知的障害と異なり、生じている問題も異なると思いがちだが、「できる・できない」という能力主義社会の価値観を押し付けられ、無能力とされれば、社会から排除されていく。それは私たちがCP者に対して行ってきた排除のメカニズムが働いていることがよく分かる。発達障害は何も新しい問題ではないのだ。とても衝撃的な読書体験だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 発達障害
感想投稿日 : 2020年8月28日
読了日 : 2020年8月28日
本棚登録日 : 2020年8月28日

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