「分かった」のが何故か「分からない」――そんな”知”の形に名前を与えるとしたら、まさに「暗黙知」なのかもしれない、と思わせる一冊。
要旨をまとめれば、学問や研究のみならず、どのような分野においても「はっきりとは目に見えていない何か」を感知する能力(=暗黙知)を人間は備えており、それを信じ追うことで、わたしたちは新しい実りを得て社会を発展させてきた、ということである。ある意味で、「言語化できないもの/根拠づけや立証がされていないもの」を軽視してはいけない、という現代人への警告ともとれる。
ほんの150ページ程度だが、哲学的エッセンスが凝縮されており、一読だけでは味わいきれない深みがある。
個人的に読みながら思ったのは、外山滋比古『思考の整理学』と少し似た趣がある、ということ。学問とは、研究とは、焦ってはいけない、早急に成果を求めてはいけない、そんな、まさに手さぐりの繰り返しなのだということを、読みながら頭の中で反芻した。
分野としては「哲学」に入るのだろうが、読みこめば、進化論であり宇宙論でありと、どんな風にも捉えられるテクストである。
学問・研究に携わる人なら、おそらく必読。そうでなくても、具体例を引きながら説明している部分は、難しい理論なしに「そういうこと良くある!」と思えるところがきっとあると思うので、ぜひ読んでみてほしい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2011年10月21日
- 読了日 : 2011年10月21日
- 本棚登録日 : 2011年10月21日
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