〈法月綸太郎シリーズ〉第6作(第1短編集)。
名探偵の第1短編集タイトルはこうでなくてはの、『冒険』である。
1990年春から92年春までに発表された7つの短編を収録。
あの三部作と並列にして書かれたものだけに、〈探偵〉の存在について徐々にゆるくなっていく?配列になっているのだろうか。
あとがきには自作解説あり。これは作品の成り立ちまで窺い知れるので、みなさん書いてもらいたいと思う。
■死刑囚パズル(1992.6,7)
先日twitterのATB短編〈国内編〉で第1位となった傑作。
死刑執行のその日になぜ死刑囚は殺害されたのかという魅力的な謎、その怒濤の消去法による推理、展開には唸らされる。
拘置所内でのフーダニットは『Zの悲劇』を思い起こす。
■黒衣の家(1990.11)
著者が19歳の頃書いたというもの。
この手のアイデアの先例となる作品を著者はひとつも知らなかったそう。
終盤明らかにされる、手紙を書いた人物があまりにも純なところが哀しいところ。
プロットは『Yの悲劇』。
■カニバリズム小論(1991.9)
何ともえげつない小論、笑。
『誰彼』と続けて読むと気づくかもしれないとされる微妙なミスディレクション……わからなかった。
■切り裂き魔(1990.4)
ミステリー小説を中心に本の扉ページなどが切り取られる事件が発生する。
『クイーン検察局』を意識し、ショート・ショートに近い。
実体験がベースになっているということで、そのあたりには同情を禁じ得ないところ笑
■緑の扉は危険(1991.5)
密室殺人と、本の寄稿がぴったり噛み合う短編。
一方でいろいろな作品の二番煎じと語っている。
この直後、『密室宣言(『名探偵の掟』に所収)/東野圭吾』を読み、面喰ったとのこと笑
■土曜日の本(1991.12)
登場人物の紹介で、だいたいのストーリー展開がわかってしまった。
五十円玉二十枚の謎はかなり有名。
ミステリ作家の様々な変名に爆笑。
■過ぎにし薔薇は……(1992.7)
失読症となった女性装丁家。
複数の図書館で天小口を確認し、借りた本が返されるとき、いわくありげな栞が挟まっている。
彼女の目的とは一体なんなのか。説得力がある結末。
総じて、正しく〈ルーツ・オブ・法月綸太郎〉といえる作品。
ミステリ :☆☆☆☆☆
ストーリー :☆☆☆☆
人物 :☆☆☆☆
文章 :☆☆☆☆☆
- 感想投稿日 : 2014年6月28日
- 読了日 : 2014年6月28日
- 本棚登録日 : 2014年6月28日
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