法月綸太郎の新冒険 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2002年7月16日発売)
3.39
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本棚登録 : 446
感想 : 45
5

〈法月綸太郎シリーズ〉第8作(シリーズ第2短編集)。
1996年秋から99年春までに発表された5つの短編(+掌編)を収録。

■イントロダクション(1997.3)
「名探偵の自筆調書」という企画物のリレーコラム。
法月綸太郎が手相占いのゲームに自身の特性を告げられる。

■背信の交点(シザーズ・クロッシング)(1996.10)
綸太郎と穂波は、出張先から帰る特急列車に乗車中、毒殺事件に遭遇する。
殺された男には不倫相手がおり、その女は途中の停車駅で、向かい合う列車に乗車していた。
二人とも同じ毒を飲んでいたのだった。
一見、気づかない可能性はあったものの示し合わせたかのような心中事件と思われたのだが……。
あとがきで会心の出来と振り返っていらっしゃるだけあり、ひねりと余韻が効いた作品。

■世界の神秘を解く男(1997.10)
ディクスン・カー『震えない男』を読んだときに思いついたトリックだそう。
綸太郎は討論番組に招かれた。心霊現象を取り上げるもので、ポルターガイスト現象が生じる家の少女について著名な教授と行うものだったが、その教授が不可能状況で死んでしまう……。
オチはけっこう鬼気迫るもので、妙な味わいがある。

■身投げ女のブルース(1998.3,4)
綸太郎は終盤助言することで登場している。
今回は『パズル崩壊』の前半部で活躍した葛城警部が抜擢された。
冒頭から注意して読まなければ著者の罠にかかってしまうだろう。
とはいえ作中の週刊誌の写真の違和、これによって綸太郎も事件の真相に気づくことになるのだが、それが読者の知るところとなるのはかなり終盤で、アンフェアすれすれの設定なのはどうだろうか。
著者曰く、「葛城が何を考えているかよくわからない不透明な性格で、このネタに必要だった」とのこと。
人を性質を見抜くのは難しい、ということだろうか。

■現場から生中継(1998.12)
殺人事件の容疑者には、テレビで警察署の前から生中継されているという鉄壁のアリバイがあった。
いかにも作為めいていて、捜査陣は替え玉説や使用された携帯電話などあらゆる面から切り崩そうと試みるが……。
真犯人のちょっとした失言から、綸太郎は罠に嵌めようと試みる。
細かな時間の供述から真相を手繰り寄せる手腕。表題のダブルミーニングにもにやり。
実はハイテク音痴だと明かす著者。このトリック自体に直接関わりはしないけれど、衆人環境でのアリバイトリックという点では、ハイテク機器に詳しくなっておいて損はない笑

■リターン・ザ・ギフト(1999.5)
ある夜、女の殺害を企て襲いかかった男は失敗し逮捕される。
厳しく追及したところ、男は女の義弟から交換殺人を持ち掛けられていた。
その義弟の行方は杳として知れず。
捜査上、義弟が借りていた三冊の文庫本が交換殺人を扱ったものであること、その本が貸し出されている図書館には穂波が勤めていたことから、綸太郎も興味を示す。
事件に違和感を覚えたのは、交換殺人を指し示す本が残されていたからだった……。
事の顛末まで隙なくつくられている作品。

ミステリ  :☆☆☆☆☆
ストーリー :☆☆☆☆
人物    :☆☆☆☆
文章    :☆☆☆☆

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内ミステリ
感想投稿日 : 2014年7月5日
読了日 : 2014年7月7日
本棚登録日 : 2014年7月5日

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