なぜ日本人は世界の中で死刑を是とするのか: 変わりゆく死刑基準と国民感情 (幻冬舎新書 も 6-1)

著者 :
  • 幻冬舎 (2011年5月1日発売)
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感想 : 13
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 とてもレビューが難しい本だと思う。この本の著者を、死刑反対派と見るか、あくまで中立的な視点で捉える慎重派と解釈するかで、この本に対する感情が大きく揺れ動く。

 第三章と第四章において筆者の意見が述べられているが、「死刑は遺族の被害感情を満足させる、被害者の尊厳の回復に寄与しているが、この事は『犯行の計画性を重視する理由がなくなる(殺人の被害にあったという事に変りないため)』、『前科の有無を問う必要もなくなる(上と同じ理由による)』、『被害者が同時に殺されたか・連続して殺されたかも関わる(一度にその場で殺されたか、機会ごとに殺されたか)』」と述べている。

 そして、四章において「果たして死刑は凶悪犯罪の発生を防ぐ効果を果たしているのか(ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアの例から)、終身刑を導入して人々の記憶に長く留めさせ賠償し続けさせるべきではないか」、「抜き難い犯罪傾向を消滅させるならば、死刑でなくても終身刑で間に合うのではないか」、「殺された側の心情は理解出来るが、あくまで被害感情を満足させるだけで、社会正義の実現に寄与しているのか(イリノイ州の死刑に立ち会った被害者の例)」、「人命・人権の尊重は全ての人間に与えられているのではないか」、「法があるのだから死刑にしてよいのか。象徴的な意味合いを持たせ、かつ備えとして残すだけでよいのではないか」といった意見を述べている。

自分用キーワード
機会の同一性 ベッカーリア(死刑廃止論者。) ノーマン・フェルドマン(妻と娘を殺されるも死刑には反対し終身刑を訴えた) 修復的司法


 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2013年9月8日
読了日 : 2013年8月30日
本棚登録日 : 2013年8月30日

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