ぼくの村は戦場だった。

著者 :
  • マガジンハウス (2006年11月22日発売)
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感想 : 34
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2012年にシリア内戦の取材中に亡くなったジャーナリスト、山本美香さんの取材記録のような書籍です。
アフガニスタン、ウガンダ、チェチェン、コソボ、イラクに実際に行って、紛争地で影響力を持つ人物から一般市民、タリバン支配下で息をひそめて暮らす女子学生など、幅広い人々に会って取材したことが記録されている。
なぜ紛争が起こるのか、多面的に理解しなければならないけれど、私のアタマでは新聞や解説書や、世間で「わかりやすい」と評判の池上彰さんの書籍やテレビ番組などではなぜか理解が深まらない。(なぜだろう?)
現地に行って命がけで取材してきた女性の、見たまま、聞いたままの取材記録からなら、もっと生々しく理解できるかも、と手に取りました。
各章の最初に、簡単に紛争情勢の解説が書いてあって、そこから著者の目線で現地の人々の様子がつづられる。とても興味深いと同時に、恐ろしいです。
イラク・サマワに派遣された日本の自衛隊についても、日本政府の説明と現地で見たことのギャップを、政府批判とかではなくありのままに書いていて、わかりやすかった。サマワでは多くの人が、当初自衛隊が来ることを歓迎していた。日本の企業が来て、安定した電力や雇用を生み出すことが多いに期待されていた。しかし実際は、「紛争地には派遣されてはいけない」はずの自衛隊は、決して隊員の命を危険にさらすことはできないわけで、できることがかなり制限され、何重にもお膳立てされたありきたりな(というか…)活動をすることしかできず、現地の人々の期待に応えられるはずもない。自衛隊の責任でもない。そこが危険すぎるんだ!と私は思った。
山本美香さんの仕事は、偏らない、ありのままの、正しい情報を世界に発信し、国際社会や日本に届けることで、素晴らしいことだと思うが、すべて読んで、平和というものはやはり、そこに住んでいる人々の手で作り上げるしかないのだと思った。外国の干渉、ましてや武器の供給、様々な名目(大義名分)による空爆などで、平和が訪れるはずもない。混乱と憎しみが残るだけだ。
そしてどんなに尊い仕事をしてもやはり、死んではだめだ!と言いたい。命をかけないとできない仕事があることはわかるが、一人の女性として、子を持つ親として、両親の娘として、人間として、やっぱり、死んじゃだめだと言いたい。2006年の日付で書かれたあとがきの最後には、ご両親への感謝の言葉がつづられている。その文章で、他のすべての章がふっとんでしまった。やっぱり死んじゃだめ!としか思えなかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ルポルタージュ
感想投稿日 : 2020年3月1日
読了日 : 2020年3月1日
本棚登録日 : 2020年3月1日

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