東電OL殺人事件がマスコミに語られる際に、「なぜ一流企業のエリートOLがそこまで堕ちたのか」というくくりで語られることがほとんどだが、売春=堕ちるという単純な決め付けが腑に落ちず、本書を手にとってみた。が、作者が描いて見せたのは、予想を上回る深さ、精密さで語られる、「おんな」だった。
容貌、出自、頭脳において、自分より劣るものを見て安堵する、男に優しく抱かれたりキスされたいと願う、自己否定により壊れゆく・・・これらのことは多かれ少なかれ実は誰もが経験することではないだろうか、ユリコのような超越した存在で無い限り。少なくともユリコのようではない私は、そのどれもを自分の体験として認めることができ、読んでいて心臓がえぐられるようだった。ユリコの姉や和恵などは、まさに自分より劣る女たちとして優越感に浸れる存在でもあった。
おんなの性が商品になることは、おんなの特権である。と同時に商品であるが故の屈辱ともなりうる。ただその屈辱の面だけを取り上げて「堕ちる」と決め付ける世の中の風潮にもの申している側面もあって爽快だ、と感じたのは、ラストでおんなが男を買うシーンがでてくることだ。
ちなみに自分はこの小説のモデルになっている高校を出ているが、多少大げさな表現もあるとはいえ、作者の鋭い描写にはただただ驚くばかりだった。
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- 感想投稿日 : 2013年7月7日
- 読了日 : 2013年7月7日
- 本棚登録日 : 2013年7月7日
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