「流域地図」の作り方: 川から地球を考える (ちくまプリマー新書 205)

著者 :
  • 筑摩書房 (2013年11月5日発売)
3.80
  • (9)
  • (23)
  • (17)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 256
感想 : 27
4

鶴見川の近くを散歩していると「鶴見川流域はバクの形」というキャッチコピーの啓蒙的な看板をよく見かける。「○○川流域」とは、なんとなく「その川のほとり」くらいのことかなあと思っていたので、「流域の形」とはどういうことなのか謎だった。本書を読み、流域とは「降水がその川に集まる領域」のことを指すのだと知った。つまり境界線は尾根ということになる。それがわかっただけでもひとつ賢くなった。
そのバク看板は、鶴見川流域センターというところが出しているもので、まさにこの本の著者の岸由二氏が中心?的な役割を果たして立ち上げたセンターだった。そうとは知らずに読み始めたのだが、鶴見川流域センターの存在は前から気になっていた。というのも、縁あって今は鶴見川流域住民なので、
"かつては「暴れ川」と呼ばれ豪雨の度に猛威を奮っていたという鶴見川だが、近年は治水施策がうまくいっていてここ数十年は大規模水害は起きていない"
という話は知っていたからだ。素直に、ありがたいことだと思っている。去年(2019年)の台風のときも、鶴見川の浸水被害はなかったとか(正確なところは私はわからない)。
鶴見川の治水のキモはとにかく「流域思考」ということ。洪水は、流域で起こる。行政区域の枠を越えて流域全体で対策を講じなければ意味がない。鶴見川はそれをいち早く実行できた河川であるということだが、全国的に見ると他にそういう例はほとんどないとかどうとか(正確なところは私はわからない)。
災害対策に限らず、環境保全の観点でも、ちょっと私たち、自分たちの立っている足元である地球のでこぼこのことを、無視していすぎやしませんかと。そういう本でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: なるほど系
感想投稿日 : 2020年3月15日
読了日 : 2020年3月15日
本棚登録日 : 2020年2月9日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする