ぼくには、うまく言えない音がある。
「ま」はぼくの舌に絡みつき、「カ」は、喉の奥に引っかかって出てこないし、「つ」でつっかえたぼくは、魔法にかけられたようにうめくしかない。
ぼくの口は動かない。朝からいろんな言葉がつっかえたままだから。
そんなぼくを迎えに来てくれたお父さんは、「うまくしゃべれない日もあるさ。どこかしずかなところへいこう」と川へ連れて行った。
うまくしゃべれないことで、笑われたことで、胸の中に嵐が起こり、目が涙でいっぱいになったとき、お父さんがぼくの肩を抱き寄せていった。
「ほら、川の水を見てみろ。
あれがお前の話し方だ」
見ると川は……
あわだって、
なみをうち、
うずをまいて、
くだけていた。
「おまえは、川のように話してるんだ」
吃音に苦しむぼくが、父親の言葉によってそれを受け入れることができたようすを感動的に描いた絵本。
******* ここからはネタバレ
吃音に苦労する著者が、その吃音を「怖いくらいに美しい」と思えるまでになったきっかけを綴った物語です。
これは本当にドラマチック。
まず、絵が素晴らしい。
コマ割り(っていうんですか?)にも工夫がされていて、文章をとっても助けています。
「ぼく」が川のように話していると気づく場面は特に感動的です。
吃音であること自体は変わらないけれど、受け入れることで、それが自分自信を表すものになっていく過程がすばらしい。
この気持ちの変化は、すべての人のコンプレックスに活用できますよね。
そうしたら、ありのままの自分を受け入れ愛すことができることができる人が増えていくのではないかと思うんです。
難しいことは描いていないので、読める子なら、中学年からいけると思います。
でも、この本は、ぜひぜひ"全人類に”読んでもらいたいです!!!
- 感想投稿日 : 2022年2月23日
- 読了日 : 2022年2月23日
- 本棚登録日 : 2022年2月23日
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