16世紀前半。キリスト教徒が支配するスペインのグラナダでは、同教に改宗し、洗礼・改名を強いられたイスラム教徒はモスリコと呼ばれながらも、自らの言語や習慣は守って生活してきた。肥沃な土地に娘夫婦と二人の孫息子と暮らすモスリコのディエゴ・ディアスは、先の領主ドン・ゴンサロと親友であり、今も家同士の友好関係は続いていた。ある日、ディエゴの長孫ミゲルが、モスリコの娘を助けるためにキリスト教徒の若者を殺してしまい、逃亡、山賊に加わってしまう。一方、ゴンサロの孫娘マリアとディアゴの末孫のエルナンドはお互いに惹かれあっていく。そして、1567年にモーロ(イスラム教)の習慣を禁じる勅令が出された。両宗教間の対立が深まり、モスリコの中には武器を手にした蜂起を呼びかけるものも現れた。
お互いの宗教や習慣に無理解なために苦しみ傷つけあう人々の姿を、実話をもとに昔話風に描く。銅版画の挿絵も、昔話感を盛り上げている。
訳者のあとがきには「エルナンドとマリアの悲恋の物語」とありましたが、私には宗教対立の悲劇を描いた話に思えました。
世界史の授業でここまで細かいことを学んでこなかったので、この時代にもキリスト教徒イスラム教の対立があったことに驚いています。
そういう事実と争いの不毛さを学ぶにはよいのですが、物語としては、展開が早すぎるのと、不必要に登場人物が多すぎるのとで、楽しみにくいです。
特に、(仕方がないのですが)同じような長い名前がたーっくさん出てくると、それが物語の本筋に影響ない部分であれば、もう少し簡略化して欲しかったと思ってしまいます。
また、せっかく実話をもとにしているので、昔話風ではなく、ノンフィクション風に読みたかったなと感じています。
- 感想投稿日 : 2018年2月20日
- 読了日 : 2018年2月20日
- 本棚登録日 : 2018年2月20日
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