意味がない無意味

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  • 河出書房新社 (2018年10月26日発売)
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意味が収束しない=無限に多義的であることを意味がある無意味とし、我々は、意味が収束しないものを有限数の意味で解釈しているにすぎない。トマトの見方は、「赤いもの」「野菜」「球に近い」などなど受け取れる意味は無限に存在しているが、一旦トマトとして理解をしている。いわば、赤い野菜をトマトとして認識させるもの、多義的な意味を無意味に切断するもの、それこそを意味がない無意味としよう。千葉はその意味がない無意味が身体であるとする。

この意味が収束しないことはラカン、フロイトの哲学でも語られ、我々人間は物自体、現実界と彼らが呼ぶ認識できない領域があって、それに対する解釈をしているに過ぎない、その解釈が千葉のいう意味がある無意味だと。
東やメイヤスーもそのラカン、フロイト哲学を超えるために、「郵便的脱構築」や「思弁的唯物論」を展開する。その流れに千葉も乗っているように思われる。
「物質界」「現実」という言葉を定義し、現実界の外側を想定する、それはまさに実際の現実のものであって、東やメイヤスーはその物質性故に手紙は届かない可能性がある、つまり意味が収束してしまうことを指摘する。

それは、目的=シニフィエからそれていく言葉それ自体=シニフィアンの横溢(おういつ){引用 言語、形態、倒錯}であり、オタクのコスプレ化、ギャル男のギャル化の極端になった認知的習慣化{引用 あなたにギャル男を愛していないとは言わせないーー倒錯の強い定義}であり、人間の複数性{引用 思弁的実在論と無解釈的なもの}である。

言語や他人、キャラと言った「他者=身体=形態」とは接近しながらも究極的には理解しえないものとして了解することが、行為をつくる。行為もまた身体であり、無限に降り続く意味の雨を、それが跳ね返す。

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感想投稿日 : 2022年7月25日
読了日 : 2022年7月25日
本棚登録日 : 2022年7月25日

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