最後の証人

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  • 宝島社 (2010年5月10日発売)
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元検索官の佐方貞人は評判のやり手弁護士。
そんな佐方のもとに、
地検の所在地で起きた殺人事件の弁護依頼が舞い込む。
高層ホテルの一室で起きた刺殺事件。
胸にナイフを突き立てて死んでいたのは主婦の高瀬美津子。
物的証拠、状況証拠ともに、
依頼人である島津邦明が犯人であることを示していた。
検察官・庄司真生も
島津の有罪が確定と思っていたが、
法廷での公判は意外な方向へ向いていく。

実は被害者高瀬美津子は7年前に交通事故で子供を亡くしていた。
その交通事故の犯人が島津だった。
目撃者もいるのに、なぜか不起訴になった島津。
美津子の夫光治は警察署にまで裁判結果を問いただしに行くが、
担当の丸山という刑事に
子どもの信号無視だと言われ、追い払われてしまう。
その時から、美津子と光治は島津に対して恨みをもつようになった。
そして7年後、
美津子を殺害した罪に問われている島津の裁判で
島津の弁護士佐方は
最後の証人として、意外な人物を呼び出していた・・・。

「佐方爆弾」ともいうべき最後の証人。
これによって美津子殺しの事件は解決するが、
7年前の事件が新たな波紋を呼ぶことになった。
この展開、本当に予想外だ。
そして、白を黒と言い含める警察の裏事情にも驚くことになる。
物語は、庄司真生の視点で書かれているところと
高瀬夫妻の視点で書かれているところが交互にある。
肝心の佐方の視点で書かれていないのだが、
主役はおそらく佐方なのだろう。

「法を犯すのは人間。
検察官を続けるつもりなら法よりも人間を見ろ」
この言葉は、庄司の上司でもあり、
かつての佐方の上司でもある人の言葉らしい。
庄司の検察官としての原点となっている言葉だ。

法のもとでは
真実のみを追求して裁かねばならない、ということがよくわかった。
庄司真生と佐方。
この二人の対決をまた読みたいと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年6月11日
読了日 : 2017年6月11日
本棚登録日 : 2017年6月11日

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