史上最強の哲学入門 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社 (2015年11月5日発売)
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本棚登録 : 5053
感想 : 338
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2019年の年明けに齋藤孝氏の「使う哲学」を読み、より西洋哲学について学びたくなったのだが、哲学の専門書は敷居が高いので分かりやすいガイド的な書籍を探していたときに目に留まったため、コンパクトな文庫版ということもあり購入。

著者は漫画『グラップラー刃牙』の熱烈なファンということはよく知られており、本書も単に西洋哲学の歴史をなぞる構成ではなく、歴史上の哲学者や科学者を格闘家に見立てた"史上最大の哲学議論大会"という、およそ哲学の入門書とは思えない設定で著されている。
また章立ても、格闘技さながらに以下の4ラウンドで構成されており、いわゆる教科書的な時系列や主義毎のカテゴライズではないため、読み手を飽きさせない。

第一ラウンド:真理の『真理』
第二ラウンド:国家の『真理』
第三ラウンド:神様の『真理』
第四ラウンド:存在の『真理』

哲学議論大会という設定ではあるが、格闘技的に議論を闘わせるような対話形式ではなく、あくまでもそれぞれの格闘家(哲学者や科学者)に対する著者の解説が展開される構成となっている。
解説はあくまでも著者の主観であり学術的・客観的ではないものの、小気味よいテンポと平易な語り口での論調は、格闘技のファンでもなく『グラップラー刃牙』を全く知らない自分でも哲学の入門書ということを忘れてしまうほどにのめり込んでしまった。これが"飲茶ワールド"なのかもしれない。

とかく理解し難い哲学分野の主義や理論の解説においても、とにかく例えが腹落ちし、文字通り哲学の入門書としてはこれ以上のものは無いのではと思えるほどに噛み砕かれた表現で分かりやすさを徹底している。著者の哲学への深い造詣と情熱がなければ本書のような作品は書き得ないであろう。

本書のおかげで哲学がぐっと身近に感じられ、より日々の生活や仕事に活かしたいと考えるようになった。
もっと若い頃に出会っていたかった一冊である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学
感想投稿日 : 2019年12月30日
読了日 : -
本棚登録日 : 2019年9月9日

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