飲茶の「最強! 」のニーチェ

著者 :
  • 水王舎 (2017年11月30日発売)
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感想 : 49
5

ニーチェの哲学書と併せて読むべき最高の書。

「ツァラトゥストラ」を読んだことがあり、ニーチェを嫌っていたが、代表的哲学家としてその哲学が取り上げられることが多く、理解を深めたいと思っていた。

ニーチェの書籍の中で購入の決め手となったのは、著者飲茶氏の書籍「史上最強の哲学入門」シリーズは哲学の心得がない者でも本質をわかりやすく説く良書であったためである。

わかりやすさという点では紛れもなく当たり本であった。

話は悩みを抱えた架空の女性と著者との対話形式で進み、初心者が抱きやすい疑問を丁寧に抑えつつ展開されているので読んでいて引っかかりがなくスッキリと読むことができた。

なりより良かったのは、私自身が「ツァラトゥストラ」を読んで感じた疑問、誤解を解消できたことである。

私が理解できていなかったニーチェの諸概念を挙げる。
・ニーチェの差別的発言
「ツァラトゥストラ」の物語では、戦争を必要悪だと述べていたり、あらゆる人々に対して軽蔑的な発言が度々繰り返されるため、独善的な差別主義者だという印象を持ち私がニーチェを嫌う最大の理由であった。しかし著者はその言葉の裏にニーチェの同情を最低なものだとする信条があり、人々を奮い立たせるために敢えてそのような表現をしていると分析している。つまりは
「敢えて言おう、カスであると!」
ということであろうか。

・ニヒリズム
ニーチェの永劫回帰の世界観がニヒリズムだと勘違いしていたが、実際は神が死んだ世界で、人々が陥るであろう心理状況を指している。

・永劫回帰
そもそも永劫回帰が何かということは「ツァラトゥストラ」では説明されておらず、ずっと疑問であったが、本書でニーチェの想像しうる最悪の世界であるということが分かった。そして永劫回帰を肯定することこそが実存哲学の答えだと知り、自分にとって革新的気づきだった。

・大いなる正午
正直な話概念としては印象になかったが、「ツァラトゥストラ」の締めくくりがずっと心に引っかかっていたいた。本書でその意味するところが分かり、なぜ"あのような"ラストになっていたのか溜飲を下げることが出来た。

・力への意志
「ツァラトゥストラ」を読んで、この言葉自体というよりはそのメッセージが印象深かった概念である。「赤子の我欲する」とは何なのか、なぜこの表現が頭に残っていたのか、それは多くを否定するニーチェをして肯定するに値するものであったからこそだと思う。

以上のようにニーチェの重要な諸概念が抜かり無く抑えられていたこと、なおかつ相談者の女性との軽快なトークが魅力だった。

個人的には、飲茶さんのルーツが知れたことが一番嬉しかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年8月18日
読了日 : 2019年8月18日
本棚登録日 : 2019年8月15日

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