ハンチバック

著者 :
  • 文藝春秋 (2023年6月22日発売)
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感想を書くのに難しく、数日が過ぎた。
当事者の視点で、健常者への皮肉や怒り、また呼吸という生命維持活動の困難、日常生活動作あるいは活動範囲の制限、小さな社会…
その表現は怖いくらいで、体や心の中の苛立ちが鋭く刺さってきた。
この本の中に作者の社会への投げかけが深くたくさん埋まっていたように思う。

そして面白い構成だ。
障がいを持つ“釈華”の話であったが、聖書の話を挟んでラストの語りは“紗花”に変わる。
釈華の別アカウントの“紗花”とも取れるし、はたまた第三者の“紗花”とも取れた。ワセジョのSちゃんは“紗花”?
この紗花が、釈華が望む復讐を成し得ようとするのだろうか。
私の読解力では分かりそうにないので色んな方の解釈を読んでみて何となく分かりつつある。
しかし読み直す気にはなれない読後感。

ドキリとした表現がいくつもあった。

人工呼吸器のアラームのピッポパピペポ
奥から湧いてきた痰をふたたび吸引して取りきると脳に酸素が行き渡って気持ちがいい。

右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲したS字の背骨が、世界の右側と左側に独特な意味を与える。

生きれば生きるほど私の身体はいびつに壊れていく。
遺伝子エラーで筋肉の設計図が間違っている。
間違った設計図で生きすぎた。

呼吸や排泄は外部装置がやってくれる。──

仕事柄、読んで良かったと思っている。
こんな表現で示されるのは斬新(変な言い方だが)。かなり参考になった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学:作者あ行
感想投稿日 : 2024年2月28日
読了日 : 2024年2月23日
本棚登録日 : 2024年2月28日

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