終着駅殺人事件: 長編推理小説 (光文社文庫 に 1-108 ミリオンセラー・シリーズ)

著者 :
  • 光文社 (2009年10月8日発売)
3.44
  • (13)
  • (21)
  • (34)
  • (10)
  • (1)
本棚登録 : 257
感想 : 29
4

昭和56(1981)年度日本推理作家協会賞長編部門受賞作。西村京太郎のトラベルミステリーとしては3作目で、恐らく最も有名な作品といえるだろう。
3度ドラマ化されているため、私も見たことがあるのだが、ドラマ版は結末が異なっていた。
まず本作で描かれる上野駅が纏うイメージが私の持つそれとは全く異なる時代性。東北新幹線も開業前で、「上野駅に行けば故郷を感じられる」旨が複数の登場人物から語られる。その感覚がとても不思議、というか。発刊当時は共感を呼ぶ概念だったのかもしれない。もう40年も前のことである。
設定と展開は、今読むと多少強引にも思える。まあ今は没交渉になっても割と簡単に連絡がつく時代だから、とも思う。
西村京太郎本人は自選のベスト5には本作を選ばず「寝台特急殺人事件」を選んでいる。確かに、「トラベルミステリー」としての構成自体は恐らく「寝台特急殺人事件」のが技巧的なのだが、いかんせん大がかりすぎて若干説得力に欠けた。本作も「動機が弱い」と言われそうではあるのだが、こんなにもやるせなく人間臭い動機こそが人を凶行に駆り立てるのだ、と考えると、どことなく切迫した苦しさを感じる。
ただトリックは「そこかよ!」となるやつではあるしいささか強引。あと、2つの物語を強引に結んでしまっているのが微妙に感じる。いかにも小説っぽい。まあ、小説なのだけど。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年6月16日
読了日 : 2022年6月16日
本棚登録日 : 2022年6月16日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする