選択の科学

  • 文藝春秋 (2010年11月12日発売)
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感想 : 482
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難解だが読めば知的興奮を味わえる良書です。
著者は全盲なので点字で書かれたものが原作となるのでしょうか?
そして、内容の方は生きること自体が選択の連続である事実から出発して、選択と自由についての考察など身近な例を使いながら展開していく流れはスリリングですらあります。
例えば、身近な人の延命措置の決定を医者に丸投げした方が、気は楽だが後ろめたさもある、逆の場合にも自分の決断が正しかったのかどうかいつまでも悩んでしまうなど、自由な選択がかえって苦しみを増幅させるケースもありえるなど、こうした深い考察が全編に繰り広げられます。
米国の大学講義のレベルの高さ(この場合はビジネススクールの特別講義ですが)は、こうした講義録が出版されて世界的ベストセラーになってしまうことでもわかります。
対する日本の大学講義のレベルの低さは、毎年同じ講師の本を教材に使うことで印税を稼ぐことが目的かのごとき状況で、そこには一方的な知識の押し売りはあっても、各自の議論を戦わせながら正解に近づくという双方向の交流がなく、したがって自分で考える習慣が身につかない点にあると思う。
もちろん本書の講義内容がそうした喧々諤々の討論が行われた結果できたわけでもなさそうだが、一読すればそれ以上の知的好奇心を満たせる内容満載なのは立派です。

私は基本的に再読をしない主義なのですが、この本は手元に置いて読み返してみたいと思わせた数少ない1冊でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年5月6日
読了日 : 2019年5月6日
本棚登録日 : 2018年12月24日

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