希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話

  • 飛鳥新社 (2014年5月6日発売)
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感想 : 6
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「絶望読書」から2冊目となる同作者の本ですが、とてもユニークな内容となっています。性格的に正反対の二人の文豪を陰と陽で分けて互いの名言を対比させていますが、面白いほど真逆の言葉を書き残していることにまず驚かされます。装丁も陽気なゲーテには白いページを、陰気なカフカには黒のページを配し工夫しています。
真逆なのは性格のみならず二人の生き様にも反映されています。底抜けに明るいゲーテは1749年ドイツ生まれで、根暗なカフカは1883年プラハで生まれていますので、同時代で互いに交わることはありませんでした。ゲーテは健康体でしたが大病を患いながらも82歳まで生き、病弱なカフカは41歳で結核で亡くなっています。ゲーテは生涯を通じて恋愛大好きでしたが家族を持ち、カフカは三度婚約するも生涯独身でした。ゲーテは絶望を経験することで強くなり、カフカはできるだけ絶望を避けて生きてきたようです。情熱家ゲーテを象徴する言葉は、「生きた、愛した、悩んだ」、カフカは「無限に多くの希望があります。ただ、僕のためにはないんです」とどこまでもシニカルです。
さて、人は絶望から抜け出すためには大きく3パターンがあります。何もせずに時が解決するのをただひたすら待ち続ける忍耐派、勇気づけられる言葉で自分を奮い立たせる行動派、自分よりもっと悲惨な状況と比較してまだましだと思い込む消極派。少なくとも行動派と消極派は、本書を読むことで心が癒される処方箋となりえるでしょう。
最後に、次のゲーテの言葉で締めくくります。
「恋人の欠点を美点と思わない者は、恋をしているとは言えない」
恋人を、親友や家族などと置き換え、恋を愛に変換してみれば、自分にとって大事な人は欠点も併せて包み込まなくてはいけないことがわかります。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年9月4日
読了日 : 2020年9月4日
本棚登録日 : 2020年9月4日

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