ナ・バ・テア

著者 :
  • 中央公論新社 (2004年6月1日発売)
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本棚登録 : 2704
感想 : 354
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空を、飛ぶことを誰よりも愛したクサナギの物語。一人称は「僕」。スカイ・クロラよりも、時系列でいえば前に位置する物語。
女性という性別の差異のためか、スカイ・クロラに描かれていたカンナミとは見える世界や認識、事象の捉え方はまるで違う。死について、パイロットとして、という点は同じなのだけれど、物事を深く考え、クールな外観とは裏腹に、自分という存在の意義や概念を理解しようとする思考の深さやその時々に表れてしまう情緒のようなものが、世の哀れや物悲しさの真理を描いている。自分の上をいく、尊敬する人間との間に、不本意ながらに生まれてしまった新しい命や、その存在によって翻弄される自分自身。そして何よりも、『僕は空を見た。まだ少しだけ赤い。もう、半分は夜の色だ。』という一節。ヒサガワが死んで、僕が空を見上げた210pのこの描写が、この表紙の空を現す要素の一つなんだなと思った。
夕焼けの表紙は、綺麗だけれどとても物悲しい。主人公のクサナギスイト自身や、彼女の思考や感受したものを表しているのかしら、とわたしは感じた。スカイ・クロラとは、また違った素敵な魅力のある本。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2012年11月3日
読了日 : 2012年10月3日
本棚登録日 : 2012年11月3日

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