かの有名な宮沢賢治の父をモデルとした小説。
序盤から心を鷲掴みにされる。
第一子として産まれた賢治に、デレデレとしたい所を
父の威厳とやらを保つために、そっけない態度を取ってしまう父の政次郎。
まさに現代のツンデレではないか。
賢治への溢れんばかりの愛を隠しきれず、
ダダ漏れしている父親。
賢治が学校へ通い、友達と遊びに行くことが多くなった時期の政次郎のぼやきを抜粋。
『親にとってはどんな友達も、わが子を横取りする人さらいのように見えるものだ。』
言いたい事は物凄く分かる。共感の嵐。
しかし、「人さらい」とは何とも物々しい。笑
賢治が自分の進むべき道を見失い、
ひたすらスネをかじり金の無心をしようとも、
何だかんだと言いながら金を出し続けてしまう政次郎。
対立することがあったとしても一貫して子供への愛は変わらない。
こうやって宮沢賢治はつくられてきたのだな、と妙に納得。
私の母の影響で、小さな頃から宮沢作品に慣れ親しんできたけれど、
こんなにも生々しい「息子」としての彼は
本書を読まなければ知り得なかっただろうな。
「雨ニモマケズ」が作られた背景を知り、しばらく呆然としてしまった。鳥肌ものだ。
読了後、興奮冷めやらぬまま母に連絡し、本書を差し出した。
手元に戻ってきたら再読しよう。
今年読んだ本の中でも上位に入るお気に入りの1冊となった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本作家
- 感想投稿日 : 2020年6月13日
- 読了日 : 2020年6月13日
- 本棚登録日 : 2020年6月13日
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