柚月裕子さんは初読みの作者になりますが
緻密な描写に私の知らない専門用語など並べ立て無知からくる緊張が巨大組織の圧力と重なって呑み込まれそうでした。相当医療分野の知識集めないと書けないようなリアリティにもしかして手術支援ロボットミカエルの取説とか取寄せて操作できるくらい把握してるんじゃないかと思ってしまった。
物語は、心臓外科医としてミカエルを使い手術する西城と、素手で手術する職人的気質の真木。異なる2つの才能が12歳の少年の手術をめぐって対立する。
大学病院といったら派閥に癒着、汚職とか見え隠れする定番の雰囲気も混じるなか、物語は佳境へと引き込まれていく。主人公は西城なのに、真木のほうに惹かれてしまいました。何故かって、それは「山が好きだからです」もうこれだけで他になんの理由もいらないことは明白っw
心に触れたのは、12歳の少年は自分の意思で選択したこと。狡い大人は人のせいにしたり言い逃れる道を用意してるのに比べると純粋でまっすぐで崇高なものに感じられました。
それにしても、プロローグの旭岳の遭難がリアリティに欠けているのが残念に思えました。山好きの私としては遭難するなんてどんなルートで登ったんだろうと興味津々でしたが5合目までロープウェイ利用して日帰り登山するのが計画だったとのこと、姿見駅ってあったので旭岳ロープウェイからのルートのはず、だとすれば山頂までは3kmない距離の登山でコースタイムも4時間もあればピストンできる行程なんですけど。9時間も彷徨うとか信じられない。しかも山頂から避難小屋までは辿りついてる訳だからそこからロープウェイのある姿見駅までは距離にして800mのほぼ平坦な下りなんですよね。ロープウェイは通年営業してるから、朝4時30分なんて日の出前から小屋を出てもロープウェイ動いてないし、稼働する時間まで小屋で待機してから下山するのが普通の選択だと思いますけど。それに視界悪くてもガイドロープがあるし10月下旬ならまだ積雪も少ないし。このレベルで迷うことまずないと思いますが・・・。登山届は出さないとね。予備のバッテリーも必須ですね。登山するなら行き当たりばったりじゃなくもっと真摯に向き合って欲しいと思いました。
雪山=遭難とか、山=自殺とか、そんなイメージを持って欲しくないと思ってしまいました。
- 感想投稿日 : 2023年6月17日
- 読了日 : 2023年6月17日
- 本棚登録日 : 2023年6月9日
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