『ブラックアウト』『オール・クリア』『最後のウィネベーゴ』を立て続けに読んで打ちのめされて以来、女王と仰いでいるコニー・ウィリスの最新長編。昨年末の発売直後に手に入れつつも積んでしまっていたところを、半年以上経ってようやく着手でき、読了しました。
かなりのボリュームながら、読み始めたら一気呵成なのは前作同様で、お得意のスクリューボールコメディが冒頭からフルスロットルで炸裂。バッドタイミングすぎるトラブルが次々と降りかかり、家族や同僚からの干渉にも行動を妨げられまくる主人公の、まったくもって生きた心地がしない状況にやきもきさせられつつも、軽快なテンポと魅力的な脇役の配置でくすぐりながらぐいぐい読ませていってくれる筆運びはさすがです。
それから、わりとウィリス作品に定番な”生意気な子ども”キャラが、ご多分にもれず今回も登場してかき回してくれるのですが、今作はこれまででその活躍ぶりにいちばん興奮を覚えたかも。
作品を通してのテーマが「コミュニケーション」であることは、主人公の勤めている携帯電話メーカーや、巷で流行しているEEDなる処置の話題からおのずと見えてくるんですが、その時点で作者の術中にはまっているとも言えます。中盤からラストに向けて、タイトルの『クロストーク』が意味するもの(SFモチーフとしてのみならず)のほんとうの姿が主人公の眼前に立ち現れてくるときの、その描写がもたらしてくれる多幸感たるや。ぜひ多くの方に見届けてもらいたいなと思います。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年9月29日
- 読了日 : 2019年9月29日
- 本棚登録日 : 2019年9月29日
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