新宿の猫

  • ポプラ社 (2019年1月10日発売)
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本棚登録 : 197
感想 : 27
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新宿ゴールデン街。ちょっと怖くて胡散臭いけれどちょっと憧れます。
かつての捻じれた若者達が大人になった今、昔どうしてそうなったのか分からない事だらけで、どの扉を開ければ未来につながっているのか全然分からなくて、悶えていた時の気持ちは今も残っているでしょうか。
たくさんの猫がひょっこり顔を出す居酒屋。店員の女の子の書いた猫の家族図。猥雑でどこか暖かな人々。色弱というハンデを背負って夢であった映像の道を絶たれ、いつも背中を丸めてもがいているような主人公。初速は遅いけれど読んでいるうちに心に加速がついて、心が次々追い抜かしていく風景はかつて自分が見た風景だったような気がしました。
昔が懐かしく、過ぎ去った時間が戻らない事が悔やまれるように、今の時間も同じように戻れない愛おしい時間だと感じさせてくれる本です。
ドリアンさんの視点は優しい。
また信頼できる作家を一人発見。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年2月25日
読了日 : 2019年2月25日
本棚登録日 : 2019年2月25日

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