アジア最大の歓楽街、新宿歌舞伎町。そこに日本語、北京語、広東語、湖南語を自在に操り、街角に立ち続ける男。李小牧。『案内人』という彼の生き方と当時の歌舞伎町の町並みが描かれている貴重な記録です。
僕はもう何年もこの街に足を踏み入れていませんが、今はどのような変貌を遂げているのでしょうね。この本をはじめて読んだのがもうずいぶん昔の話で、今回ここにアップするためにもう一度読み返してみました。読んでいて李小牧という男のしぶとさ、いきかた、あらゆるものが圧倒的な存在感で僕の中に入ってきました。
この本に描かれているのは彼の生い立ちから来日。ファッションが好きで東京モード学園での学生生活や「案内人」になったいきさつまでと、1980年代の後半から1990年代の歌舞伎町の風俗が描かれていて、そういった意味では貴重な記録となっております。ちょうどこの時期は福建省から来た黒社会の人間たちが歌舞伎町を肩で風切って歩いていたときで、僕もとある「住人」から昔、
「今は中国系の人間が多くなったよ」
と耳打ちされたことがあったことを思い出しました。
今もおそらく彼は歌舞伎町の街頭にたち続けているのでしょうが、この本を読む限りだと、地回りたちに頭を下げ、警察官とは友達となり、かつては自分のところで働いていた人間が「商売敵」となって、彼の前に立ちふさがる…。現代のカオスを象徴する新宿は歌舞伎町で今日もまた繰り広げられる狂宴のなかに、彼の存在は確かにある。そんなことを、読んでいて感じました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2011年11月8日
- 読了日 : 2011年11月8日
- 本棚登録日 : 2010年11月6日
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