日航機123号便墜落事件。ここで取り上げられているのは犠牲者の遺族や第一発見者となった上野村の人。警察官や自衛官。そして身元確認に立ち会った看護士や医師たちの記録です。
この本は『沈まぬ太陽』の内容を補完するために『墜落遺体』と同時に読んでいました。日航機123号便が墜落し、520人もの命が一瞬にして消えたその日から時間が止まってしまった遺族や、お互いの思いがすれ違って、離婚してしまった犠牲者の両親。残された人間の深い悲しみや想いが事件がいまだに風化されないものなのだということをいまさらながらにして知らされるようでした。この事故の真相は、いまだに明らかにされていない部分があるのですが、『人災』であったのではないかというのが作者の見解だそうです。
そして、現場に入った自衛隊員の証言が非常に生々しく、そのあまりのむごたらしさから、戦場そのものだったという言葉が、印象に残っています。遺体の身元確認をしていた医師や看護士たちの証言も壮絶で、当時はDNA鑑定などがまだなかった時代だから、死臭と腐臭と線香のにおいがない交ぜになった体育館で汗まみれになって処置に当たっていたそうです。
そして、遺体を管理する葬儀屋の仁義なき戦いやマニュアルのない対応をしなければならなかったという極限状態。そこで見えてくる善と悪。美と醜のコントラストが人間の業の深さを感じさせました。あの事件から四半世紀が過ぎましたが、決して忘れることのできない記録として、一読していただければ、これに勝る喜びはありません。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2011年7月9日
- 読了日 : 2011年7月9日
- 本棚登録日 : 2011年7月9日
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