イタリア的恋愛のススメ シモネッタのデカメロン (文春文庫 た 56-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (2008年2月8日発売)
3.66
  • (17)
  • (37)
  • (49)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 338
感想 : 42
4

イタリアの男女がいかに「お盛ん」かということを書き記したエッセイです。情熱的な恋をしたいなぁという気持ちになりましたが、イタリアの伊達男になるには気配りが必要だということもまた、痛感した次第です。

ロシア人の「週16回」(何のことかはあえて言いません)という話に度肝を抜かれていたのもつかの間、イタリア語通訳の第一人者と言われる彼女のこのエッセイにはいたりあの男女が織り成す恋愛悲喜劇とその「お盛んぶり」が全篇にわたって描かれていて、さすが、「エッ勝手リーナ様」こと故米原万里女子からシモネッタ・ドッジのお名前をいただくだけのことはあるなと、思わずのけぞってしまいました。

しかし、民族を越え、国境を越え、宗教を超える普遍のお話である男女の艶笑話、および「下ネタ」は僕もはっきりいって嫌いではないので、ページをめくるたびにニヤリと笑ったり、イタリア人の性に対するおおらかさや、一人の日本人男性をめぐって、イタリアの美人が路上でここには掲載を差し控えるような言葉で相手を罵倒しながら殴り合いをしていたりと、「激しい」愛情表現の数々に国民性の違いと、パンツェッタ・ジローラモのようなイタリアの伊達男になりたいなぁ、という少しの憧れを僕にくれた本でございました。

イタリア男の情熱的な口説き文句は身持ちの固いイタリア女性とのセットだ、という筆者の言葉にもあるように男女をめぐる土地柄や民族性の違い、というのもうかがえます。

僕が最も目を引いたのは筆者が韓国から日本に来る四人のイタリア人観光客で、よくよく話を聞いてみると、その一人の叔父があの「コーザ・ノストラ」で知られるジョン・ガンビーノ氏で、自身も映画「ゴモラ」で一躍有名になったナポリの巨大犯罪組織「カモッラ」の幹部であるというエピソードを読んだときにはっきりいいます。ドン引きでした。

別れ際にガンビーノ氏が
「君にはいろいろ世話になった。何か僕にできることがあればやるから遠慮なく言いたまえ」
という言葉に筆者はもちろん冗談で
「えー、実は殺してもらいたい男がいるんですけど」
というと彼は笑いもせず、即座に
「お安い御用だよ。そいつをイタリアに連れてきてくれたら、いつでもOKだ」
といったそうです。通訳という職業の奥深さとともに本旨とは少し外れますが、こういう世界もあるんだ、という意味で一番印象に残っています。

個人的に恋愛エッセイは日ごろ読まないんですが、この本は面白かったです。でも、あまり艶笑話が好きではない、という方にはお勧めしません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年2月6日
読了日 : 2012年2月6日
本棚登録日 : 2011年10月27日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする