朽ちた花びら: 病葉流れて2 (幻冬舎文庫 し 14-5)

著者 :
  • 幻冬舎 (2005年8月1日発売)
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感想 : 10
5

自伝的ギャンブル小説『病葉流れて』の第二巻です。放蕩に放蕩を重ねた梨田雅之がその学生生活を終える場面までが描かれてます。ここまでの人生を送った人は他にいないでしょうね。

川崎の競輪場で競輪をやろうとする梨田がまず最初に描かれています。そこで彼は競輪で大当てして、120万円もの大金を稼ぎ出して、姫粉にしている借金を返し終えたのもつかの間、今度は幼馴染の母親たちと囲んで打った麻雀でまたしても100万円負けてしまいます。またしても姫子に梨田はカネを無心するのですが、彼女が出した条件は『大学を休学して1年間自分の店で働くこと』でした。

梨田は大学を離れ、ますます夜の街とギャンブル三昧の放蕩生活に身をどっぷりと浸すことになります。そして、初めての女であるテコとの間も微妙になってきたときに麻雀の師匠である永田から連絡が来ます。彼に会うと
「大学は辞めて、恋人のルミをつれて田舎に帰って家業を継ぐ」
というものでした。梨田が彼の実家にである金沢に行くと彼の家は有名な旧家で、そこでの様子と、余命いくばくもないルミと入籍して、彼女と最後のマージャンを囲む。非常にいい場面でした。

東京に帰ってきた梨田はすべてと決別し、独立すると決心します。テコと別れ、新しく男と女になった香澄にも『しばらく会わない』のメモを残し、ますますギャンブルと夜の街におぼれていく梨田。そのうちに、商社マンの奥さんの佳織にはめられてイカサマ麻雀にはめられるも、すんでのところでヤクザの有坂にすくわれる。その有坂に『お前さんは大学に戻って勉強をしたほうがいい』とさとされ、店のママである姫子にも金を返したあとに『大学に戻りなさい』とさとされ、梨田は大学に戻って、学生相手も麻雀で生計を立てるという生活をするのですが、遺書に暮らしている香澄が流産で病院に運ばれたところあたりから彼の運命が変わり出します。

かねてからのの敵であるレフティと再会し、高レートで麻雀を打つことになったり、彼女のために就職を考えるようになりますが、以下に友人の紹介とはいえ、面接会場の大阪まで会社の金を使ってグリーン車で行こうといったり、役員たちとの面接で『趣味は麻雀と競輪』『学校の成績はカフカ全集』とのたまう梨田。今のご時世でこれをやると確実に面接官とケンカでしょう。

そして、心を病んだ香澄を見舞うために岐阜にある彼女が入院している病院に立ち寄るのですが、梨田の態度に香澄はかたくなになってしまいます。最終的に彼女は裏の山で手首を切って自らの命を絶ってしまいます。姫子からこの知らせを聞いた梨田彼を責める姫子の『そうよ、うんと苦しむがいいわ』という言葉に始まって
「あんたはその年で香澄ちゃんと二人の間に出来た赤ちゃんの二つの命を奪ってしまった。あんたに出来る唯一の償いは、これからもずっとその苦しみを背負っていくことだけよ。初めてあったころ、わたしはあんたにこういった。何事もやるんだったらとことんやんなさいって、ね。でも、あんたがやってきたことはすべてが中途半端。だから周囲の人間が迷惑をこうむるのよ」
このせりふに僕はドキッとしました。まるで自分のことを言われたようで。

このあと、梨田は有坂を交えてのレフティとの再々戦を戦い、有坂がレフティに刺されたのを見て、その後、梨田は自分の大学の卒業式を途中で抜け出して、競輪場にいき、そこのバンクを見ながら自分の学生生活が終わったことを実感して目頭が熱くなるラストシーンは、僕の心に、重い読後感を残してくれました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年10月27日
読了日 : 2011年10月27日
本棚登録日 : 2010年11月5日

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