サッカーワールドカップ日本代表選手および、監督やスタッフたちを「食」という分野で支え続けた一人のプロフェッショナルの手記です。彼は福島出身だと伺っていますので、この場を借りてお見舞い申し上げます。
僕ははっきりいって、サッカーには余り興味はありません。しかし、この本はすごく面白かったです。僕が本当に読みたい話はこういうものだったんだと読んだあとに思わずつぶやいてしまうほどでした。この本はサムライブルーことサッカーの日本代表を「食」という分野で支え続けた一人の料理人の「もうひとつのワールドカップ物語」とも呼ぶべき本です。
南極料理人こと西村淳さんの本もそうですが、極限下で戦い続ける男たちのエネルギーとなるものはやっぱり「食べる」ということで、南極とワールドカップ。ピッチと厨房。戦うフィールドは違えど、世界の料理人と料理で火花を散らしながらサッカー日本代表メンバーやそのスタッフを支え続けた姿にプロフェッショナルとして、心底尊敬の念を持ちました。
世界各国の厨房で料理をするので、現地のスタッフともやっていかなければならない。しかし、彼らにも料理人としてのプライドがあって、最初は容易に心を開かないのですが、筆者の料理の腕前と、お互いの国の料理を教えあったりしてコミニュケーションをとりながら、親交を深めていく姿が読んでいて好感をもてました。そして、世界各国で行った「ライブクッキング」も選手たちには好評だったようで、こういう料理が食べたいなと思い、唾液が口からあふれてしまったことを思い出します。
そして、南極料理人のときもそうだったんですけれど、異郷にあって日本を思い起こす料理として、「しょうゆラーメン」がそれに当たるという話で、筆者が選手たちに振る舞い、選手や監督やスタッフ。最終的にはほかの国のスタッフや料理人にたるまで、彼の作るラーメンのファンになってしまったというくだりは、あぁ、どこにいてもラーメンなんだな、という共通の思いでしみじみとしたものを感じました。
ほかにも、異国で感じた苦労話やいつもは笑顔を絶やさない岡田監督がワールドカップの間はずっと眉間にしわを寄せていたという中に、彼らの中にあるプレッシャーを感じることができました。サッカーに興味のある方はもちろんのこと、もうひとつのワールドカップとしてこういう一人一人のプロフェッショナルたちがいるからこそ、あの夢舞台があるのだなということを感じていただきたい方には、ぜひ読んでいただければと思っています。
- 感想投稿日 : 2011年12月7日
- 読了日 : 2011年12月7日
- 本棚登録日 : 2011年12月7日
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