言語学が専門の著者による、世界の90言語についての解説。序として「本書は、わたしがたった一人でさまざまな言語について考えていく。知識にも経験にも愛情にも欠ける、一人のアヤシい自称言語学者が、全世界の言語を相手になんらかの文章を捻り出そうというのだ。無謀な話ではないか」と書いており、その正直さに納得し、「そうだよね、無謀だよね」という共感を持てる人でなければ、この本は楽しめないだろう。
そうは言いつつも、やはり言語学者なので基本的な「道の言語に対するマナーや接し方」といったお作法はしっかり押さえており、どの言語も見開き2ページしかない割にはそれなりにキッチリと論じられている。語族や語形変化、音韻や発音の特性など、複数の視点から各言語を見つめ、著者なりの感想や印象もしっかり出している。むしろ、その言語に詳しくないからこそ、ある程度、突き放した視点で深入りせずにその言語について論じることができているのではないか、という印象。
取り上げている90の言語の中に、日本国内ですらほぼ知られていないアイヌ語が取り上げられているのも良い。「小さな存在を効率よく無視するのではなく、多様性から言語を考えていきたい」(P.20)という一文からは、著者がこの本を書いた思想の根幹を感じさせられる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
言語
- 感想投稿日 : 2022年12月30日
- 読了日 : 2022年12月30日
- 本棚登録日 : 2022年12月30日
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