全体的にはかなり好きな作品ながら、テーマとストーリーの相性が良くないのか惜しい印象が残った。タイトルのTowards zero「ゼロ時間へ」が、一つの事件に集約されていく強烈な流れを感じさせて素晴らしいのに、焦点となる企て自体がアガサお得意の見た目と違う人間関係から導き出される、つまり解決の時まで謎のため、例えばZの悲劇のような冤罪の死刑執行阻止を目指すカウントダウン的な緊迫感など得られようもなく、後付けの肩透かし感が残ったし、二次的な理由から起こってしまった凄惨な事件が悲しい。
犯人造形や、バトル警視、法律家等のサイドストーリーも面白かったし、追い詰められて無実なのに罪を認めてしまうところなど現代でも考えさせられる要素が多く古さを感じさせない。タイトルや語り方が違ったら大満足だったかもしれない。
クイーン の先行作と同じトリックというコメントがあって、最近読んだアガサの短編に当該作らしいタイトルをいじった話があった。あちらの犯人は探偵が見逃さないのが腹立つような正義漢で、本作と対照的なのも面白い。
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- 感想投稿日 : 2022年3月12日
- 読了日 : 2022年2月26日
- 本棚登録日 : 2021年12月26日
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