昭和16年夏の敗戦-新版 (中公文庫 (い108-6))

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  • 中央公論新社 (2020年6月24日発売)
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以下、メモ箇所
◆総力戦研究所の成り立ちと成果
世の中実質が悪くなると形式を重んじるのが通弊だから、総力戦研究所などというぎょうぎょうしいものを作ったんでしょう

「やる」という勢いが先行していたとしても、「やれる」という見通しがあったわけではなかった。そこで、みな数字にすがったが、その数字は、つじつま合わせの数字だった。

これならなんとか戦争をやれそうだ、ということをみなが納得し合うために数字を並べたようなものだった。赤字になって、これではとても無理という表をつくる雰囲気ではなかった

主観的な争いに対し、客観的な数字は最後の調停者として立ち現れてくる。

侃々諤々の議論を経て出た結論は、「緒戦は優勢ながら、徐々に米国との産業力、物量の差が顕在化し、やがてソ連が参戦して、開戦から三〜四年で日本が敗れる」

すべての命令権を持つ統監部(教官側)と研究生で組織する〈内閣〉の〝往復書簡〟は、真珠湾攻撃と原爆投下を除いては、その後起こる現実の戦況と酷似していた

開戦までの半年は、すでに出ていた結論を繰り返して反芻し、みなが納得するまでの必要な時間としてのみ消費された

◆戦時下の在り方
緊急事態における意思決定のプロセスは、刻々と変遷する情勢につねに対応できるよう、文書化され記録される必要がある。

政治的リーダーの役割は、数値目標を示しながら、みずからの言葉で国民に説明し協力を求めることなのだ。

軍部、特に海軍には、今さら「アメリカとは戦えない」とは言えない事情がありました。当時の国家予算のおよそ半分が軍事費、その半分以上が海軍に渡っていたのです。「戦争をしないなら」と、これが大幅に削られたら、軍隊には失業者があふれる。

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感想投稿日 : 2023年8月19日
読了日 : 2023年8月15日
本棚登録日 : 2023年8月15日

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