家族を想う父親と繊細な高校生たちの人間関係に胸が張り裂ける! 憎みと愛のミステリー #罪の余白
女子高生が学校の屋上から転落した。事故か自殺か?
打ちひしがれていた彼女の父親にはいってくる学校や彼女の友人たちからの情報は、当たり障りのないものだけだった。父親は愛娘のために真相解明を目指すが…
分かりやすい丁寧なストーリーと、心情描写が豊かな文章。さすがは芦沢先生、デビュー作とは思えない素晴らしい出来映えです。
ミステリーとしても強烈さは少なめですが、しっかり及第点は取れていて面白いです。全体的にエンタメ小説としてしっかり読み応えがある作品に仕上げてあるので、気軽に手に取って読めるおすすめの作品になっています。
なにより本作の素晴らしい点は、登場人物たちの描写。
父親、同僚、娘、娘の友人たち、全員の個性が完璧に描けています。ホント芦沢先生は人を魅力的に描くのがお上手。今にも壊れてしまいそうな、でもしたたかな女性の機微を綺麗な日本語で綴ってくれるんですよね。
特に本作は変に芸術的な表現や構成を必要以上に凝ることがなく、比較的シンプルに良いところが出ているので、芦沢先生の魅力がしっかり感じられる作品になっていると思いました。
しかし若くはない年齢になってくると、こういうお話は読んでて苦しいですね。
高校生たちの人生や生活に不安でいっぱいな思いや、微妙な人間関係に巻き込まれる不幸。自分も学生当時は必死に生きていたなぁ…
そして父親として強く生きるという、至って当たり前のこと。これがすごく難しいんです。実は最近母親を亡くしたんですが、それをきっかけに、やっと少しだけできるようになってきたかなーと思っています。
芦沢先生の魅力がバッチシ感じられる本作、おすすめです!
- 感想投稿日 : 2022年7月31日
- 読了日 : 2022年7月29日
- 本棚登録日 : 2022年7月29日
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