金環日蝕

著者 :
  • 東京創元社 (2022年10月31日発売)
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本棚登録 : 1363
感想 : 166
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★5 胸に秘めた信念と出来過ぎの頭脳で立ち向かう姿がカコイイ!バランス抜群のミステリー #金環日蝕

■あらすじ
北海道の女子大学生である主人公の春風は、ひったくり犯を目撃する。同時に居合わせた高校生の錬と犯人を追いかけるも、間一髪で逃げられてしまった。二人は協力して大学内で犯人捜しのため捜査を始めていく。
一方、経済的に苦労している少女の理緒は、喫茶店で高齢者に手助けするような会話をしているのだが…

■きっと読みたくなるレビュー
はぁ~、素敵なミステリーだったわ~

青春ドラマであり、家族愛もあり、社会派小説でもある。伏線も丁寧に仕組まれていて、ミステリーとして良くできてる。しっかり読みごたえもあるし、バランス感覚も秀逸。これはちょっと凄い。

この作品の強みは、場面場面が決して派手ではないのに、強烈な印象で読ませる点。
さりげなくも惹きつける始まりから、ありがちな青春ミステリーと思いきや、かなりトンデモな展開で読み手を離さない。その後も決して騒々しくはなく、丁寧で優しい進行。しかし主張は強く、読者の胸にナイフを突き刺してくる。

登場人物も魅力たっぷりで、特に本作の主人公の春風と錬に痺れる。
責任感、信念、そして自身の弱みとそれに抗う強さ。ネガティブな言葉は決して吐かず、胸を張って戦っていく姿勢。なによりセリフのひとつひとつが素晴らしいのよ。「熱いセリフ」というより「強いセリフ」なんです。

かっこいいなぁ、私もこんな人になりたい。

また本作、若者たちが関わっている犯罪シーンがあるのです。ちょうどここ数日、テレビのワイドショーはこの犯罪でもちきり。
人それぞれ色んな過去や背景、今の経済環境があるのでしょうが、頼むからその頭脳、人を笑顔にすることに使ってくれよ。

やたらその犯罪をリアルに描写されている本作を読むと、感情が昂ぶってしまいました。

■推しポイント
父親って何だろう。
親になって10年以上経ちますが、いまだにはっきりと言えない。

大きな包容力で守ってくれて、困ったことがあったら頼りになって、妻や子どもたちにはいつも優しい。なんとなそんなイメージを持ってますが、果たしてこれが正しいのか? そしてなにより、実行できているのかわからない。いつも不安に思っていて自信がありませんでした。

しかし本作を読んでいると、父親を無理に定義したり、過剰に努力すること自体が間違っているとわかってくる。いつも家族と一緒に人生を歩む、楽しむ、悩む、戦えばよい。邪なことはせず、ただ持ってる力でまっすぐ進むだけでいい。

そうすればいつしか父親として輝いてくると気づかせてくれました。素晴らしい作品をありがとうございました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2023年2月14日
読了日 : 2023年2月12日
本棚登録日 : 2023年2月12日

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