「自白」はつくられる:冤罪事件に出会った心理学者 (叢書・知を究める)

著者 :
  • ミネルヴァ書房 (2017年2月25日発売)
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感想 : 5
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詳細に語るほど真実らしく見えるが、何年も前の日常を詳細に語ると嘘っぽい作り話に見える。

心理学者の鑑定書はまともに対応しない。供述の任意性や信用性の判断は裁判官の専決事項。

取調官の確信の壁にぶつかる辛さ。
取り調べの苦しさと将来受けるはずの死刑判決の苦しさは天秤にかけづらい。今の現実、と将来の可能性、の違い。
犯人なら、死刑を現実のものとして考えるが、冤罪事件はそう考えられない。死刑の現実感がない。

一度自白すると、堪忍を演じる、ことになる。
「賢いハンス」状態になって真実らしく語ることになる。
ハンスが正解を出せるのは、出題者が正解を知っているから。

犯人を演じる、から犯人と思い込む、に至る。

証拠の弱い事件ほど崩れにくい、という逆説。
証拠がはっきりしていれば、その証拠を否定すれば冤罪は証明できる。

真犯人も虚偽自白がありうる。

精密司法がもたらす書類の山。
無罪判決を出すには、有罪以上に論拠が必要。
取調官の証拠なき確信、が虚偽自白を引き出す。
現場は推定無罪の逆。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養
感想投稿日 : 2017年8月27日
読了日 : 2017年8月27日
本棚登録日 : 2017年8月27日

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