父が突然、「俺は溺れ死にたくないからな!痛くない、苦しくない死に方がしたいからな!!」と謎のリビングウィルをしてきて、何かと思ったら片手にこの本を握り締めていた。
長尾和宏先生、今まで存じ上げなかったが、著者プロフィールを見ると沢山の肩書きも著書もお持ちのすごそうな先生である。『病気の9割は歩くだけで治る!』という本も書いてるらしい、、、なんだかその先を読む気が失せてきたが、頑張って本文も読んでみた。
読んでみるとかなり面白かった。まず構造が興味深い。長尾先生は今まで様々な著書で在宅医療(自分の家で死を迎えること)の素晴らしさを語ってきたらしい。この本は、それを盲信していた読者が自分の親に実践したらとんでもなく酷い目にあって、腹いせ?に長尾先生に怒鳴り込んでくる経過を描いたドキュメンタリーである。
担当医でもなんでもなかった長尾先生に怒鳴り込みにいく患者家族、ちょっとあれ??と思ったがそこはまぁ置いておいて、在宅で死を迎える人の姿がどんなものか知らなかった私としては、患者が死に至るまでを詳細に記録した家族の手記は本当に生々しく衝撃的なものであった。
死の直前に苦しい、、苦しい、、と呻き、動く力ももう無いはずなのに最後の力を振り絞ってもがき苦しみ、そしてこと切れる。
それを何も出来ず傍で見つめるだけの家族は、本当に気が狂いそうな気持ちになるだろう。自分が殺したと思ってしまうのも無理はない。
薬の投与などの治療行為を家族が行うことは、死の受容を難しくする要因の1つなのではないかと感じた。医者がやれば、医療行為のプロの手を尽くしても助からなかったんだなと、一応の納得は出来るし、なんなら医者を責めることが出来る。
死に対する医者の役割を再認識すると共に、在宅医療が今後発展していくのは非常に難しそうだなと感じた。私が死ぬ時も、こんな苦しい思いを家族にさせたくないのでぜひ病棟で死にたいなと、この本を読んで強く思った。
在宅医療のメリットを語った本も読んでみたい。
あと、良い医療は良いコミュニケーションから生まれるのだなとつくづく感じました。
- 感想投稿日 : 2021年3月4日
- 読了日 : 2021年3月4日
- 本棚登録日 : 2021年3月3日
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