ばかもの

著者 :
  • 新潮社 (2008年9月1日発売)
3.39
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イメージが損傷されたときには言葉に頼るしかない
ナイーブなヒデのナイーブな陰茎
たおやかで、かそけき女性、やんごとなき方
気持ちいいことは全部~から教わった
心の中でオロオロしている自分に気がついて恥ずかしくなる
すぐ峠をせめるヤンチャなクルマ
ふつうか。ふつう以上とふつう以下といろんな男たちが体を通り過ぎて俺はアベレージ
俺は一体どうなるのか。俺なんかどうにもならないのはわかっているのだ
こうしちゃいらんねえ
ケヤキの木
わいせつ物はおれのものだが、陳列したのはー
仕事が終われば着替えて帰る作業着と私服では誰もが違う人間に見える
それらは古びてかかとの薄くなりかけた靴下のようにぼんやりと引き出しの奥に入ってはいるがそれを取り出して身につけることはない
墨をにじませたような雲
おれには高級すぎて
額田王を知らなかったいまも知らない
非難がましい
いつも変な悲しいような気分になる
東京になにを求めているわけでもないけど、そうなると迷う
だらだら感が自分にとって唯一本当のことなのだ
もうなにもない甚だしい困惑だけだ
夜の間はまだ非現実の空間にいられるように思えるのだが明るくなってきたらそのときはすべてを受け入れなければならない。明るくなったときこそひとりになる
自分に価値がないと思った瞬間から心臓は動き出したかのようだ
消えモノ
匂いの記憶ほかのいろんな記憶と違ってうつろいやすい
眠り病
誰もが一人でいる時間
ひきこもりや昼夜逆転生活というのはめずらしいものでもないし、それがために大学に来れないと言えばそんなもの
心が傷つきやすく
勤労学生
行かないのにこれ以上続けても仕方ない
この瞬間が捨てがたい懐かしいものに感じられてならなかった
瞬間的な熱心さ

誘蛾灯のように誘う
恋に恋して少女は大人に
これで勝てなければ貴様は無能だ

変わってないといったけど何かが変わっているような気がしてならない
失われた長さ
薄情な男じゃないが自殺自慢なんていうのがたまらなく嫌
にわかに信じがてぇ
酒を飲むことにやましさを感じるようになる飲めば他人から非難される飲めば知らぬ間にひとを傷つけるなのにどうして飲まずにいられないのか
迎え酒
少しだけなら、と思って飲みはじめる。コップ一杯の冷たい酒が体に染みていぬと心がやや軽くなる。ほろ酔いが一番いいんだな、と思う。もう寝てしまおう。寝てしまえばなにも感じなくなる。罪悪感も、不安も、将来を考える恐ろしさも
どれほどの恐怖があったとしてもなかったとしてもおれはどうせ死ぬのらだし、おれに酒をやめろというやつもいつかは死ぬのだしもうどうだっていいじゃないか、酒はアタマが悪くなるっていうけれど、もともとが悪いのだし、アタマを使おうとも思わない
非個性的な奴らの列
思っていたほどのダメージはなかった。すでにダメージのなかで生活していたのだ。感覚が鈍磨していた。本当に愛していたのかどうかわからない。ただ必要とし、独占したかっただけなのかもしれない。あの楽しい頃に戻れれば。酒を飲んでも少しですんで、楽しくて、体が欲しくていちゃついてたくさん笑って。どれだけ傷つけたことだろう。どんな謝罪も通じないほど~の心は疲れていた。悪いことをした。でも~だったらきっといい男をみつけて結婚もできるだろう。そうなるように願った。もう何年間もーは自分のことしか考えていなかった。他人のことには殆ど関心がないか、非常識なほど楽観的だった
針飛びするレコードのように回っていた。酒を断つか命を断つか
わかっていてもどうすることもできないでいた
命を断てばその後何もないから気が軽いかもしれない
日々は悪夢だらけの睡眠に蝕まれて
方法の問題ではない。どうやってたどり着くかだ。どの苦痛を選んで今の苦痛を超えるか
ーの時間は今日と明日しかない。そして明日はいつもーを裏切ってまるで今日と同じ日なのだ。ーが昨日のことを覚えている必要はない。昨日は今現在、まさに再現されているのだから
しらふで行動を起こすことなんて無理だ
差し出された一枚の清潔なハンカチのようだと思った。それを受け取って畳んでポケットに仕舞う、そんなポケットらがいまのおれにあるのだろうか。再会して洗ってアイロンをかけたハンカチを返せる日がくるだろうか。
ただ死んではいけない理由がひとつだけできた。それは俺にとってとても貴重なものだ。死んではいけない理由を重ねていって、それを数えたいなんて甘えとしか言いようがないがたぶんおれはその甘えをーに対しては暴力という形であらわしてしまった。二度とおれみたいな男に会わなければいい、と思う。たぶん俺はずっと誰かに甘えたい男なのだ。でもそれはこういう形じゃない。もっと、誰も不幸にならないような甘えそんなことは可能なのか
それよりも軽蔑されることが怖かった。そうだ。俺はあらゆる人から軽蔑されることが怖い。このーさんに軽蔑されたら俺はまたしんではいけない理由を見落としそうだった。おれは何よりも軽蔑されることが怖くて、それ以上に自分で自分のことを軽蔑してきて、それなのに人から軽蔑されることを長い間、ずっとやってきた

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年1月12日
読了日 : 2012年1月12日
本棚登録日 : 2012年1月12日

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