枕草子 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川文庫ソフィア 95 ビギナーズ・クラシックス)
- KADOKAWA (2001年7月25日発売)
『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』という本を読んだ際、フィンランドの現代女性が夢中になった枕草子を日本人なのにほとんど読んだことがないことに気づき、改めて読んでみることにした。
本書は枕草子の有名な章段をピックアップし、初めに現代語訳、次に原文、最後に解説やコラムを掲載する。すべてをきちんと読み込むのがベストかもしれないが、現代語訳をざっと読んで気軽に内容を楽しむこともでき、さすがビギナーズ・クラシックス、といった構成である。
これまで読んでいなかったたくさんの章段を読んでみて感じたのは、枕草子の醍醐味は「あるある~」という共感性だ、ということである。
『めったにないもの。舅に褒められる婿。また、姑に褒められるお嫁さん。』ああ、嫁姑、婿舅問題は1000年たっても変わらないのだ。
『(めったにないもの。)全然欠点のない人。顔立ち・心・ふるまいもすぐれていて、ずっと世間で人付き合いをしてきて、ほんの少しの非難も受けない人。』そうそう、人間誰でも欠点はあるもの。
『はらはらして困るもの。お客などに会って話しているとき、奥の部屋で内輪話などをするのを、止めるに止められないで聞いている気分。好きな男がひどく酔っ払って、同じことを繰り返ししゃべる。当人が聞いているのを知らず、その人の噂話をしたとき。』わかる・・いたたまれない気持ちになる。
『(はらはらして困るもの。)にくらしい顔をした赤ん坊を、親だけはかわいいものだから、いとしがりかわいがり、赤ん坊の声色で、言ったことなどを口まねするの。』そんな身もふたもないことを・・と思いつつ納得する自分がいる。
『格別気にもされないもの。陰陽の大凶日。』数日に一回はあるらしいので、気にしていられないよね。
枕草子の中で半分近くを占めるのは、このあるあるねたなんだそうだ。
教科書に載っている章段は日本の四季や王朝のしきたりについてのものが多く、古典の勉強、歴史の勉強に資することを目的に選定されているような気がする。それは大事なことかもしれないが、それだけだと枕草子の本当の面白さは伝わりにくいのではないだろうか。
枕草子をすべて読むと、フィンランドの女性が枕草子に親しんだのと同じくらい日本人も共感できるような気がする。
次は現代語訳で全章段を読んでみたい。
- 感想投稿日 : 2022年10月16日
- 読了日 : 2022年5月29日
- 本棚登録日 : 2022年10月16日
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