建築女子が聞く 住まいの金融と税制 (住総研住まい読本)

  • 学芸出版社 (2015年7月24日発売)
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建築学を教える1957年生まれの大学教授と1973年生まれの建築ライター、二人の建築「女子」が、建築に関わる金融や税制の仕組みについて専門家からレクチャーを受ける。

なるべくいろいろな分野の本を読もうと思っているが、経済や金融の話は苦手意識が先に立つ。
この本は、建築に関わる部分に限定はされているが、金融や税制のしくみについてかみくだいて説明してくれており、入門編として読みやすかった。

本書は、大きく金融編と税制編に分けられる。
金融編では、住宅ローンは安全なのか?そもそもどういう経緯で制度が作られたのか、といった基本的な話から、住宅ローンの証券化や『住専(住宅金融専門会社)』など、バブル崩壊やリーマンショックの要因となった制度のこと、さらには、高齢者の所有する家を担保にお金を貸して、所有者が死んだらその家を売却して代金を返してもらう『リバース・モゲージ』や『マイホームリース』といった新しいしくみのことなど、多岐にわたって解説される。

専門家がかなりかみくだいてくれているとはいえ、金融の仕組みはなかなか難しい。建築のことは良く知っていても、金融についてはまだまだ初心者な建築「女子」たちが、素朴な疑問を臆せず質問してくれるのがありがたい。
住宅に関わる新しい仕組みについては、完全に理解できたとは言い難いが、住宅を人生のステージごとに変えていくことは自然だ、という考えにはなるほど、と納得した。

税制編は、私にとっては金融編よりはとっつきやすかった。住宅ローン減税は、家を売りたい人が持ち家信仰を助長させるための仕組みなのではないか、と思っていたら、建築「女子」の馬場さんも同じことを聞いていた。でも、専門家によると、人間の生活の根幹に係わる「衣・食・住」の中で、こんなに「住」に対するサポートがない日本のほうがめずらしい、とのこと。住宅ローン減税はあってしかるべきで、逆に賃貸に対するサポートがなさすぎるのが問題なのだそう。また、税金を取られるのが悪いことのような風潮だが、税金は、格差社会をある程度国の補助で均一にするための「民主主義の対価」であるはずで、それがいやなら自己責任で暮らしていくしかない、という言葉にははっとさせられた。とはいえ、税金を払う具体的な利益が感じられないやり方も問題であるとも。

大事なことだからこそ、わからないまま不安に思ったり、中途半端に不満を持つのではなく、まずは知ることが大事だ。経済や金融に苦手意識のあった私にとっては、少なくとも、そのことを理解したことが小さな一歩になったと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 建築・都市計画・まちづくり
感想投稿日 : 2022年2月3日
読了日 : 2021年12月19日
本棚登録日 : 2022年2月3日

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