歴史とは何か 新版

  • 岩波書店 (2022年5月17日発売)
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感想 : 37
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大学時代に清水幾太郎訳で読んだ。美しい翻訳と言われることもあるが、当時の私には堅苦しくて途中からあまり覚えていなかった。2022年に発行された新版は講演録のライブ感を出すためか〈笑〉が多用されている。
単純に彼が笑うだけならよいが、論敵に触れた箇所になると皮肉に輪をかけるようにもとられて、感情移入ができる。

第2講では個人の力と限界、関係性を考えるきっかけになる。すなわち歴史とは社会的・時代的に条件付けられた歴史家が、同様に社会的・時代的な事実とのあいだで試みる対話/相互関係なのだという。

ここをおさえつつ、科学と倫理、因果連関、進歩と読み進めると現代にも通用すると痛感する。古典的名著と呼ばれるゆえんであろう。

あまりにも有名だが、以下の2つのフレーズは特に胸に刻んでおきたい。

43ページ
歴史とは、歴史家とその事実のあいだの相互作用の絶えまないプロセスであり、現在と過去のあいだの終わりのない対話なのです。

86ページ
過去は現在の光に照らされて初めて知できるようになり、現在は過去の光に照らされて初めて十分に理解できるようになるのです。人が過去の社会を理解できるようにすること、人の現在の社会に対する制御力を増せるようにすること、これが歴史学の二重の働きです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2024年1月25日
読了日 : 2024年1月23日
本棚登録日 : 2024年1月2日

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