時間はつとめて哲学的なテーマであり、「いき」の構造で知られる九鬼周造がどんなアプローチをしているのか興味を持ち読んでみた。
フランスで行った講演をもとにした本。フランス語やドイツ語、さらには両国の哲学者の論考を交えながら議論は晋。西洋の未来へ一つの方向に向かっていく矢の発想に対して、九鬼は東洋的な繰り返す環=循環の発想で時間をとらえる。永遠回帰はニーチェの永劫回帰にも近い考え方のようである。
引用される話が興味深い。
・シシュフォスの神話
・これやこの 行くも帰るも別れては 知るも知らぬも 逢坂の関 (蝉丸)
永遠の今、という言葉が出てくるが。これらは永遠回帰なのだろう。前者は苦行、後者は刹那のような印象を抱いていたが、根っこは同じということか。ただし、九鬼自身は脚注でそんなものはないと思っていると言い出したり、読者を混乱させる部分はある。
あとがきを読んでようやく九鬼の言わんとしていることの半分くらいは理解できた気がする。
最後にこういう本を出してくれるのはさすが岩波書店。ありがたいです。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
哲学
- 感想投稿日 : 2023年6月4日
- 読了日 : 2023年5月25日
- 本棚登録日 : 2023年5月25日
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