秋葉原事件 加藤智大の軌跡 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2013年6月7日発売)
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本棚登録 : 299
感想 : 39
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現実は複雑で、複雑なことを単純化するのではなく複雑なまま理解していく必要がある。その通りだと思う。働き方や家族観などが多様化した世の中では大学出て就職して、結婚して子供持って一軒家を持つというようなルートではない、様様な背景の色々な人がそれぞれ複雑な事情を抱えている。
それこそ居酒屋の店主が単純な勝ち組でないように。事件の教訓として複雑なことを複雑なまま理解することが大事というのはわかる。
また裁判では家族、特に母との関係に帰結されたことのみで、それはやはり時間の関係はあるにせよ、単純化して理解ということになってしまい、どうなのかなと思う。
ただ母との関係の中で言葉によるコミュニケーションでなく突発的な行動によって自分が不快に感じたことをわからせようとするという、大変生きづらいコミュニケーション方法がついた。それはその後の彼の人生を困難にし、事件に繋がっていったと思う。
人生のどこかで彼を諭してくれる人との出会いはなかったのかな、と思うが、大学に行かず、仕事も派遣でテンテンとするだとそうした深い関係の人はできにくいのかと思う。加藤智大は私だ、という声が事件後、ネットに溢れたのもわかる気がする。
どこかで踏みとどまれなかったのかなと、本を読みながら何度も思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年8月7日
読了日 : 2022年8月7日
本棚登録日 : 2022年8月7日

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