大学に入りたての主人公・桃子の、半分愚痴まじりのような気だるい口調の一人語りにグイグイと引き込まれた。
ちょっとクセがある登場人物ばかりだけど、言ってしまえばどうってことのない、特に大きな事件が起こるでもない日常が綴られる。
でも、この日常がずっと続くわけではない。
そんな予感をうっすらとまといながら、若い桃子と花子がモラトリアムを満喫している様子を見ていると、まさしく小春日和の日に昼寝をしているような気持ちになる。
ただ、ところどころに挿入されるおばさんが書いた小説やエッセイが、長閑な日常の中の不思議なアクセントになっている。
桃子を含めたおばさんの周りの日常が、おばさんのテキストには反映されている。
というか、そもそも桃子達の日常も作者・金井美恵子が書いたテキストである。
そのことを思い出して、今自分が読んでいるのは一体何なんだ?と一瞬クラっとするような感覚に陥る。それが楽しい。
唐突に終わってしまったような印象があるラストだが、30歳になった桃子と花子を描いた続編があるとのこと!絶対読もう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説・詩・短歌
- 感想投稿日 : 2019年4月14日
- 読了日 : 2019年4月12日
- 本棚登録日 : 2019年4月14日
みんなの感想をみる