人類が生まれるための12の偶然 (岩波ジュニア新書 626)

著者 :
  • 岩波書店 (2009年6月26日発売)
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感想 : 39
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更科功の『宇宙からいかにヒトは生まれたか』と並行して読んだ。というのは、更科さんの本は面白いのだが、難しいところもあり、きちんと理解するためにもっとシンプルにまとまっている本で概略を頭に入れてからのほうがよくわかるだろうと思ったからである。どちらも宇宙の誕生から人類が繁栄するまでを解説している。

初学者には読みやすく、親切で、最初に読むならこれかな、と思う。まず宇宙の誕生のところで「想像するのがとても難しいところですが、それまでは文字通り何もありませんでした。」(P2)って、科学者には書けない文章だと思う。当然だと思っているから。でも素人は「何もない」って、空間もないの?本当に何もないの?って思う。で、この文章を読んで、「想像するのが難しいのは私だけじゃないんだな」とほっとする。(ちなみに更科さんは、私たちが3次元しか想像できないことから説明していて、たいへん面白い。)
更科さんの本を読んで比較すると、まずかなり大雑把に解説されているな、ということ。これは貶めて言うのではなく、大雑把にまとめるのが難しいことを、よくここまでまとめたな、と感心して言うのである。なぜなら、よくわかっていないと大雑把にまとめることはできないからである。
ただ、知的好奇心をそそるという点ではやはり更科さんの本に軍配が上がる。
しかし、著者は専門は経済学なので、監修者がいるとはいえ、参考文献を読み込んでよくここまで書けたなと思う。更科さんは学者であり、自分の専門と重なっているから、詳しいのは当然と言える。ちなみに巻末の参考文献も更科さんの本とかぶっている本が数冊あるのが興味深い。

細かいことを言えば、更科さんの説と違うところもある。比重も違う。眞さんは「〇〇という説はこうです」「△△という説はこうです」と説明し、「現在は〇〇が有力です」とか「まだわかっていません」という書き方。更科さんはもっと踏み込んで事例を挙げて具体的に紹介し、自説も加えているのが立場の違いを表していて面白い。

構成もとても親切である。各章の最後にタイトルにある12の偶然のいくつかが、章のトピックをまとめる形で書かれている。

中高生だけでなく、大人も読んでおくと現代科学の一般常識がわかる。

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感想投稿日 : 2020年5月15日
本棚登録日 : 2020年5月15日

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