銀河の果ての落とし穴

  • 河出書房新社 (2019年9月20日発売)
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本棚登録 : 154
感想 : 10
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『クネレルのサマーキャンプ』以外は読んだ。
今回はSFのようなタイトルと表紙絵で、いつもとは違うのかなと思って読んだが、いつもと変わらぬケレットだった。これは貶して言っているわけではない。
歯に衣着せぬ語り口、意外な発想(でも読めば、現代社会の問題に根ざしていることがわかる)、唐突な終わらせ方。切なくなるような物語でも、決していい話にはしないところなど、どれも好きだ。
イスラエルのユダヤ人同士ですら、来歴や暮らし、考え方でかなりの差があり(当然と言えば当然なのだが、どうしてもアラブ人対ユダヤ人ばかりが取り上げられるため、関係の薄い人は忘れがち)、決して一枚岩ではないということは覚えておかないといけないなと思う。
長編や映画にしたら面白いようなプロットをあまり膨らませることなく終わらせてしまうのは、ちょっともったいないけど、これも作者らしい。
エッセイに比べるとブラックな面が際立つが、この甘くないところも良い。
「とっとと飛べ」「窓」「はしご」「アレルギー」「タブラ・ラーサ」は特に良かった。
ヘブライ語文学作品の翻訳と言えば母袋夏生さんと決まっていたが(母袋さん訳なら上手いので安心して読める)、これは今回初めての翻訳者。下品な言葉の勢いがリアルで良かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年12月15日
読了日 : 2019年12月15日
本棚登録日 : 2019年12月15日

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