非常に抑制された文章。なのに溢れるほどの詩情がある。
手放される屋敷、不幸な事故があった農家、田舎の商店街、地元の有力者の邸宅。そして主の消えた豪邸。景色や建物だけでなく、描かれた人々すべてが、はっきりとした姿で浮かんでくる。すべての人物が心に孤独と苦しみを抱えながら、それを人のせいにせず、公にもしない。それだけに深い悲しみが伝わってくる。
頭のおかしくなった司書が、自身で意識してはいないのに、物語を大きく動かす役割を果すというのが、本当にうまい。
アイルランド人は日本人に似ている気がする。
訳者によるアイルランドの歴史の解説で更に理解が深まった。
切ない、清冽な恋愛小説。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2015年12月23日
- 読了日 : 2015年12月23日
- 本棚登録日 : 2015年12月23日
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