風車祭 (文春文庫 い 39-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (2001年8月3日発売)
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本棚登録 : 365
感想 : 50
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 沖縄の話。
 沖縄といっても八重山諸島、島歌にジジイババアのいっぱいいる世界。
 若い子もいるが、あえて主人公は御年96のフジだと言ってしまおう。フジの下に3代の娘(みんな出戻り)がいて、みんなそれぞれにパワフルだ。ああ、パワフルだ、というのはわれわれが東京で見るババアよりよっぽど達者に生きている。そういう本である。

 このフジおばあの孫の孫の少年が一応のヒーローとなっている。まあ一応、小説というものの体面上若い男が主人公っぽくないといけないよね、というくらいのもので、この少年が肉体を失った自分の先祖(美少女)に淡い恋を抱いたり、少年にディープラブをかける妖怪豚(乳房が発達して6本足になっている)に熱いアタックをかけられたり。少年の内なる世界を青春の嵐が駆け巡り、島というこの外の『世界』にも嵐が吹き荒れる(沖縄だからね)。

 このふたつの嵐を作品の軸に、実に緻密にひとつの物語を作り上げていて読みごたえのある小説にしあがっている。
 この小説を読んで「あたしも沖縄に住みたくなりました」とは言わない。あまりにもにおいにあふれていて、熱っぽくて、潔くないエネルギーむき出しの世界。

 漫画化もされているが、ぜひ小説で読んでもらいたいもんです。あの濃厚な空気は、小説を読む醍醐味といえるでしょう。
 夏の課題図書に。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・エッセイ
感想投稿日 : 2013年6月24日
読了日 : 2013年6月24日
本棚登録日 : 2013年6月24日

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