「ハリー・ポッターと死の秘宝」 (上下巻セット) (ハリー・ポッターシリーズ第七巻)

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5

 あー、終わった。
 長い旅であった。
 最終巻の感想だけ書いても仕方ないので、全体を通した感想も交えてなんか書いてみようかと思うわけなのですが。

 最終巻、なんだか、一番エンディングを急いでるのは作者だった気がする。というのも、今までの巻に比べて時間の流れはぶっ飛ぶわ、魔法がビュンビュン、火花はバンバン飛んで人はボンボン死んで血がザーザー流れて、フィナーレっぽいっちゃあフィナーレっぽいんですが、でも、最後だから許されるのか。映画になったらめくるめくグランドフィナーレになることでしょう。それだけの素材はある。

 けれども、書き手としてはやっぱり自分をコントロールできてなかったな。というのが正直なところです。でもよくも読者を飽きさせずウン千ページもつきあわせた。これは『失われた時を求めて』には出来ない仕事です。『フィネガンズ・ウェイク』にも出来ないだろう。
 などと。結局7集だけのまとめかよ!

 じゃあ、全体の話に入るけれども、結局「なんだったのか」ということに関しては、魔法使いは魔法使いだし、マグル(ただの人間を指す)はマグルなんだ。お互いに相容れないし、相容れないゆえに避けられないの悲劇もある。しかしその矩を越えられるのは「愛」だけだ……そうかな。テーマは愛。そうだろうか?

 結局「穢れた血」を受容しなくても、ルシウス夫妻は戦場でドラコを探しまわったし、魔法そのものを否定したバーノンさん一家はそのままどこかにいなくなってしまった(殺されたのかもしれない)。もう一度云うが、版元が推すように、本当にこれは「愛」の物語なのか? いやむしろ、「情」が種々のロジックを破壊するという皮肉、もしくは風刺ではないか。上を下への大騒ぎとは別に暗躍するリータ・スキーターや、ハリーに情けをかけられたがゆえに殺されるワームテールなんかの脇役を見ていると、むしろ「情はすべてを狂わせる」という逆説的な部分への示唆のほうが強くないだろうか。

 作者ローリングは、「正義や悪、帰属のロジック」と「情」の関係、その一点において、冷酷なまでに中立であったように思う。
 がゆえに、やっぱり最後はドンパチにしすぎたよな。はやくこの重荷を下ろしたい、楽になりたい、という筆の焦りが見えてしまった。この辺がプロじゃないんだなぁと、アタシは考えるのであった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・エッセイ
感想投稿日 : 2013年7月1日
読了日 : 2013年7月1日
本棚登録日 : 2013年7月1日

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